地球温暖化と「机」
まだアザラシを追っている。2月25日に家を出発してから、もう2ヶ月近くなる。娘へのお土産にアザラシポーチを買った。
宿の窓から見る春の海は荒れている。今年産まれたアザラシの赤ちゃんたちはどうしているだろうか。
札幌の桜の開花は観測史上最速だという。
知床の流氷が急に解けたのもうなづける。だからニュースだといったのに・・
あの日のウトロ沖の最後のボロボロの流氷には、多くのクラカケアザラシ、ゴマフアザラシの赤ちゃんが集まっていました。その成長段階は様々で、それはあちこちの氷で別の日に産まれた赤ちゃんたちが、最後の氷を求めて集まっていたことを示します。すでにオホーツク海の流氷はあらかた解け、その赤ちゃんたちが流氷本体に達するには150kmは泳がないといけません。まだ離乳したばかりの赤ちゃんにそれは無理でしょう。そして、そのボロボロ氷にはシャチが集まっていました。これは地球温暖化による大型ほ乳類の赤ちゃんの被害が日本の沿岸で起こっていることを示します。
しかし、私がこれを真剣に話した北海道のH新聞のデスクも東京のA新聞のデスクも、日本の沿岸で大型ほ乳類が死んでいくことの重大さを理解できなかった。というか自分の仕事を増やしたくなかったのでしょう。興味を持たれませんでした。私らフリーのカメラマンには新聞のギャラではとっても割が合わないのに、あえて伝えるべきと思い、ニュースを提供しようと働きかけたのですが。
先日の読売新聞アザラシの写真の説明間違いはT君ではなく、東京のデスクが間違えたようです。学者にも尋ねたらしいですが、その学者も間違えたようです。他に記事中に「死産(早産)」と書くべきところを「流産」と書いているように、ここもデスクのレベルはたいしたことなさそうですね。
今新聞のデスクをやっている世代は、私が報道の現場にいたころのまさにライバルだった連中ですが、現場からの情報の重要性をあまり判らない、ただの「机」になってしまっているのですね。
桜が早く咲いて嬉しいぐらいの記事でも書いていることでしょう。
今日たまたま電話で話した動物写真家も別の動物で感じた、今年の早い春の異変をメディアに伝えたが、その重要性が理解されなかったと嘆いていました。
地球温暖化による異変への警告は、私たち動物写真家は比較的早くから、それを訴えていましたが、学者もメディアもあまり耳を傾けて来ませんでした。私は「学者が温度を測っている間に、生きものが死に出している」という印象すら持っています。そのぐらい私たち現場の人間が感じている温暖化の進行は早いのです。
私は上記のような新聞デスクたちは、現在の地球温暖化に対する大人たちの意識を代表しているのではないかと思っています。その意味では彼らだけを責めるわけにもいきません。しかし、これが言えます。
「地球温暖化を大人たちが止めることは不可能ではないか」
大人たちは自分たちはその被害にあうことがないぐらいに思っているのではと思います。次世代、そのまた次世代のことを真剣に考えている大人が、いったい今どれくらいいるのか。それを考えても経済的に儲からない以上、大人たちの出足は遅いのです。
私は大人ではなく子どもに語りかける必要性をひしひしと感じています。
地球温暖化を止められる可能性があるのは大人ではなく子どもたちではないかと思っています。
今日もある小学校からの講演依頼を受けました。大事な仕事だと思っています。
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コメント
う~~ん 私も地球温暖化を止めるよう何ができるのか今も具体的には動き出すことができていないけれど、たくさんの人たちを動かすことのできるメディアの人たちがもう少しいろいろな(本当の)情報を伝えてくれたらなあと思います。
せっかくの貴重な情報提供を受け止めてほしいです。
自分たちではなんともすることができず、子供に孫にそれを託すなんて・・・・。自分たちの手で大切な子供を守りきれないことが悔しいです!!もっと危機感を持つ人が一人でも増えるように小原さんのブログから得た情報を伝えます。
まなとくんはしっかりお父さん役をしていますよ!
頼もしい限りです。
投稿: junko/ito | 2008年4月22日 (火) 22時16分
junko/itoさま ありがとうございます
私もまなとに「おとうさん電気のつけっぱなしダメだよ」と言われると堪えます。こんな風にこどもが大人を動かすことができるのではと思っています。
小学校の講演などでの子どもたちの反応は大人以上に真剣です。子どもたちの感性を、大人の知性より、信じたいと思っています。
投稿: 小原玲 | 2008年4月22日 (火) 22時31分
マドレーヌ島の穏やかな時間から一変して、日本の流氷の現状にショックを感じずにはいられません。こういった状況が外国ではなく、私たちの国「日本」で発生しているという危機感を無関心に過ごしていくことって本当に怖いことだと思います。
小原さん、メディアの方たちの「無関心」さにあきらめないでください。嘆かないでください。
私含め、ブログを読んでいる人達がその家族、そして周りの友人達へ「小原さんの想い」を伝えますからね。
身体に気をつけてお過ごしください。
投稿: 快晴隊長H | 2008年4月22日 (火) 23時36分
快晴隊長Hさん どうもありがとうございます。
実は一番大事なコミュニケーションは
メディアではなく口コミだと思っています。
だからこうやっていただけるコメントが嬉しいです。
投稿: 小原玲 | 2008年4月23日 (水) 23時14分
NHKの蛍の番組で小原さんを知り写真と共に環境問題を考えていらっしゃる姿勢に感動しファンになりました。(^^)
地球温暖化の問題では10年ぐらい前からアラスカやヒマラヤの氷河が急速に溶けていると聞いて気にしていました。最近また加速しているようですね。
レイチェル・カーソンが「沈黙の春」で農薬の危険性を指摘してからもその考えが本当に理解されるのには数十年かかりました。この問題もまだ時間がかかりそうです。
効率化、利便性の代償としての地球温暖化だと思われますのでこれはかなりの難問だと思います。それでも小原さんの写真やこのブログを通して一人でも多くの人が問題意識をもってくれることで何かが少しずつ動くのだろうと思います。
ノーレジ袋も少しずつ動いているようですし、できれば自動車の排ガス問題を解決したような情熱がまた発揮される事を願います。
投稿: moonjune | 2008年4月24日 (木) 01時54分
moonjuneさん ありがとうございます。
実は今回の長い取材のお供の本は
レイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」」です
子ども達のセンス・オブ・ワンダーこそが
地球温暖化を防ぐ最後の切り札になると、
この取材を終える今、思っています。
大人の役目はその子どもの感性を衰えさせないことではないかと。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: 小原玲 | 2008年4月24日 (木) 07時53分