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2014年9月15日 (月)

クラシッククロームと撮影者の意思

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 X-T1グラファイトシルバーのカタログの、「クラッシッククローム」の説明文がとてもカッコいいのです。
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ありのままではなく、思いのままに。
撮影者の意思を伝える写真へ。
第6の選択、「クラシッククローム」。
(中略) 「クラシッククローム」は、Xシリーズを使う写真家からの要望により開発をスタート。特定のフィルムではなく、グラフジャーナリズム全盛期の雑誌や、ドキュメントタッチの写真集に“印刷されたイメージ”を徹底的に見つめることから画質を設計しました。今までの絵づくり5種類とは明らかに違う、僅かに渋みを含んだ色彩とシリアスな階調。単なる事実を写した画像ではなく、撮影者の視座や思いが込められた写真へ。新フィルムシミュレーション「クラシッククローム」が、写真表現の領域を拡げます。
(X-T1グラファイトシルバーエディション カタログより)
ーーーーーーーーーー
 私はこの色の言い出しっぺの一人です。
 私はもう報道の仕事は現役ではないので、それほど困っていなかったのですが、私の薦めでX-Pro1を導入した友人のフォトジャーナリストたちからの、一番の困ったという声は「色が綺麗すぎる」だったのです。
 ほとんどの用途では、色が綺麗なのは良いことですが、ことフォトジャーナリズムにおいては、綺麗すぎる色が現場の悲惨さを伝えるのにマイナスになってしまう場合があるからです。被災地や紛争地での悲しい場面がそうです。
また作家によっては、個性的な表現のために、あえて意図的に濁った色にカスタマイズしようとしても、狙った通りの「汚い色」が出ないということがありました。私も一緒になって色々なフィルムシミュレーションやカメラ内RAW現像を試したのですが、確かに困難でした。
 そんなこんなで新しい色の必要性を求めるフォトジャーナリストや写真作家の声を富士フイルムに伝えました。考えようによっては富士フイルムの色を否定するかのような要望に、担当者は真摯に向かいあってくださりました。
 写真家からは「コダクロームのような」という声がありましたが、私の世代はコダクロームの色の良さも悪さも知っています。まさに私の現役時代は、世界のフォトジャーナリスト達がコダクロームから富士フイルムに乗り換えて来た時代でしたので。なので私はコダクロームそのものでは、現在の印刷用途には汚すぎるので、コダクロームを超えたドキュメント用途の色が欲しいというようなことも伝えました。
 さらに世界中の写真家から色々なアドバイスがあったと思います。サンプルを見る限りとてもいい、落ち着いた品のある色調・階調が出ています。
 このカタログのコピーを読むと、担当者がどれだけ頑張ってくれたのかが良くわかります。過去のグラフジャーナリズム全盛期の雑誌やドキュメンタリータッチの写真集を、「徹底的に見つめ」てくださったのですね。
 「撮影者の意思を伝える写真へ」とてもいい言葉です。
 私たちは解像力チャートやカラーチャートを撮りたいのではなく、現場で感じた「意思を伝えたるために」写真を撮りたいのです。
 画素数や解像力、AF速度がましても、それだけでは意思は伝わりません。意思を伝えるのに必要なものが何か、それをカメラメーカーには考えて欲しいです。

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コメント

X-E1 を使っていて、私は PROVIA が好きなのですが、
Kevin Mullins 氏の X-Pro1 のセッティングではカラーは、
PRO Nega Standard のようです。

http://www.the-owl.co.uk/hints-and-tips/x-pro1-best-settings.html

ここに書かれていることを読んで、その理由がわかったように思います。

投稿: Aki_Schulz | 2014年9月16日 (火) 14時54分

以前にX-E2はベストの報道カメラだとの記事がありましたが、私は趣味の世界なのでお散歩スナップですが、普段撮り歩くのに使うのは上部に出っ張りがないX-T1ではなくてX-E2です。
それだけにこのクラッシククロームはX-E2にこそぜひアップデートで対応して欲しいモードだと熱望しています。o(*^▽^*)o

投稿: アラン | 2014年9月17日 (水) 12時33分

昔、写真は趣味だった若かった父がNikonで撮影したコダックのスライドを思い出しました。それはニクソン政権下の米国留学中のNY都市周辺のいわゆる観光写真でしたが渋く落ち着いた主張しすぎない色調でそのままニューヨークのイメージとしてずっと記憶していました。実際仕事で訪れた際の印象は、そのカラーイメージそのものでした。是非試してみたいです。

投稿: もやし | 2014年9月17日 (水) 23時12分

Aki_Schulzさん
 Kevinさんはいい婚礼写真を撮りますよね。
 フィルムと同じように、色々使い分けるのがいいと思います。私はベルビアとアスティアがほとんどです。

投稿: 小原玲 | 2014年9月18日 (木) 07時41分

アランさん
 X-E2にも入れてほしいという要望は伝わっています。
 ただ判断は判りませんが。

投稿: 小原玲 | 2014年9月18日 (木) 07時49分

もやしさん
 はい、古い欧米の街の色のイメージでありますね。私も楽しみにしています。

投稿: 小原玲 | 2014年9月18日 (木) 07時50分

このフィルムシュミレーションが使いたいから、最新機種を買う!
それぐらい訴求力のある機能追加だと思いますが、X-T1、X-E2はたまたX-Pro1に追加されると、ユーザーとしては嬉しいが9割、1割は有料でも良いけど・・・って思います。

ミノルタのインテリジェントカードみたく、SDカードとしてアップデートと同じ手順で機能追加される仕組みがあれば、必要に応じて機能の取捨ができ、メーカーもファームウェアにリソースを注ぎ甲斐があるのではないでしょうか。

投稿: じゃいろ | 2014年9月20日 (土) 12時57分

じゃいろ さん
 先日のギャラリーXのオープニングに集まった方たちからも、今までの機種にクラッシククロームを入れて欲しいという要望は色々と伝えられていました。
 どうなるかは判りませんが、その要望が強いことは伝わっていると思います。

投稿: 小原玲 | 2014年9月21日 (日) 03時03分

郷原一と申します。

小原先生は、Xシリーズはとにかく色が素晴らしいと言われておりますが、現像ソフトでXシリーズと同じフィルムシュミレーションの色が再現できたら、極端な話、別にどのカメラを使っても結果は同じという結論にはならないとお思われでしょうか。
後処理でその色が再現できれば、色再現に限って言えば、センサーに個性はなくなるわけではないのでしょうか。

宜しくお願い致します。

投稿: 郷原一 | 2014年9月22日 (月) 14時12分

郷原一 さん
 これはXシリーズが登場した時に、多くのプロカメラマンも誤解していたものです。現像ソフトで同じものが作れると。しかし、それができた人を一人も知りません。
 ある部分の色をRAW現像で同じ色にすることは可能です。しかし、その色の周囲の階調まで同じにすることは不可能です。
 富士のフィルムシミュレーションの魅力はこの「階調」にあります。
 

投稿: 小原玲 | 2014年9月22日 (月) 15時17分

小原先生は富士フイルムの色の美しさについて力説されておられますが、曾ての名機、S5Proは使用されてなかったのでしょうか?
暫くはCanonを使用されていたようですが。
私は未だにS5Proが現役のメイン機でして、フジの色の素晴らしさは当時から認識していましたし、Xシリーズでの色の美しさについては何を今更感があります。笑
NikonFマウントでフジのセンサーの組合せの一眼レフを再び出して欲しいです。

投稿: 原田信浪 | 2014年9月23日 (火) 18時48分

原田信浪さん
 はい、S5Proの頃はEOSを使っていました。それは当時のデジカメはまだ高感度性能が弱く、EOSだけが同秒数ノイズリダクションの一括がけの機能を持っていたため(私がアイデアを提供しました)、その機能がホタル撮影には必要だったからです。
 X-TransCMOSになって、ノイズリダクション自体が不要な高感度性能と、ローパスレスの描写が加わって、富士に移行しました。

投稿: 小原玲 | 2014年9月23日 (火) 19時13分

なるほど、そうなんですね。
でも、ホタル撮影はそうかもしれませんが、アザラシや猿の撮影なんかは高感度は関係ないと思うのですが、それでもS5Proは使わなかったのでしょうか。
確かに高感度は使い物になりませんよね。

投稿: 原田信浪 | 2014年9月24日 (水) 07時18分

原田信浪さん
 そうですね。色はとても良かったのですが、その他の画質も含め、アザラシを撮るのに一番のカメラではなかったと思います。一番のカメラを私は仕事で使います。
 ポートレートにはすごく人気のあったS5Proですが、他の用途には元のボディ問題もあって、今いち浸透していなかったと思います。ローパスも入っていましたし、まだフィルムシミュレーションも開発過渡期でVelviaの名前を使うことが社内的に許されていなかったと伝え聞いています。
 アザラシには毎年C社の開発者がプライベートで来ていて、当然アザラシを撮ることを前提にカメラ開発が行われていました。N社、S社の方も来たことがありますが、C社の方がダントツに熱心でした。
 となると問題がなければC社を使います。そのC社のカメラより画質が良かったので、X-Pro1を使うようになりました。

投稿: 小原玲 | 2014年9月24日 (水) 10時48分

丁寧なご回答恐れ入ります。
そういう経緯があるのですね。
ありがとうございます。
ところで、私の友人がS5Proで撮影した画像を見ていたく気に入り、中古でS5Proを買おうかとしていて、バッテリーもNikonのものとは違いますし、メンテの面からお勧めしておりません。
げんざいのXシリーズであれば、S5Pro以上の色は再現できるのでしょうか。
私は未だに塗り絵のようなCMOSよりポジっぽいCCDの発色が好きなんですが、、、

投稿: 原田信浪 | 2014年9月24日 (水) 12時03分

原田信浪さん
 たしかにCCDの色の良さはありました。
 ただローパスレスのX-TransCMOSになっての解像の良さと高感度性能は大きいですね。
 Velvia時代のフィルムの開発者が、XシリーズからVelviaの名前を使う許可を出したと聞いています。

投稿: 小原玲 | 2014年9月24日 (水) 12時14分

写真からは随分遠ざかっていましたが、最近デジカメを始めました。X-M1を使っていますが、クラシッククロームの色が見たくてX-30を買ってしまいました。まだ手元には届いておりません。
私は、30年ほど前はコダクローム(KR)を使っていました。クラシッククロームはコダクロームのような色調と言われているようですが、、当時の印象ではコッテリとした濃いめの色調だったように記憶しています。しばらくして、KRよりは自然な色合いのエクタクローム(EPR)を使うようになりました。今回のクラシッククロームは、ある色はKRのような、ある色はEPRのような印象ですが、私だけでしょうか?
また、製品が届けば分かることですが、X-30にはRAW現像ソフト付いていると思いますが、これで他のXシリーズで撮ったRAWデータをクラシッククロームで現像出来るのでしょうか?

投稿: TAKAcan | 2014年9月25日 (木) 19時47分

追伸
X-30が手元に届きました。
X-30には付属のCDがありません。ソフトはFUJIのサイトからダウンロードして使います。
X-30対応のRAWファイルコンバータにはフィルムシミュレーションのクラシッククロームはありません。
よって、今のところPCのRAW現像ではクラシッククロームは出来ないようです。
カメラ内RAW現像のみクラシッククロームに対応しています。
お騒がせしました。

投稿: TAKAcan | 2014年9月27日 (土) 14時08分

TAKAcan さん
 コメントありがとうございます。
 いずれAdobeのCameraRAWとLight Roomも対応してくれると思います。少し時間がかかるかと思いますが。
 クラシッククロームはそのままでもいいのですが、そこからいじるとまた個性的な表現ができるフィルムだと思います。
 

投稿: 小原玲 | 2014年9月27日 (土) 22時01分

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